「アイデアだけではダメ。自分だからこそできる理由を明確に。」(DMM.comグループ会長 亀山 敬司氏)
DMM.comグループ会長 亀山氏に向けて、WILLFU STARTUP ACADEMYの
受講生、卒業生がプレゼンテーションを行うイベントを開催。
学生100人が参加したイベントで、亀山会長からいただいたフィードバックをまとめました。
—「自分だからこそできるプラン」を考えろ—
今日は多くのプレゼンをありがとう。お疲れさまでした。
全体的に思っていたよりレベルが高く、面白い内容でした。
色んなフィードバックをしたけど、
事業を見る上で一番大切なのは、「自分だからこそできる」プランかどうか。
今日出てきたアイデアの中で具体性があるもので言えば、
「大学生のコミュニティを活かして事業をする」というものがあったね。
これは、よくある話のような気もするけど、「自分が大学生だから、
大学生のコミュニティを使って何かをやっていく」という方法は、
それなりに説得力がある。
「自分達だからこそできます」という事がビジネスを行う上では実は結構大事で、
今後資本を集めて投資をもらってと進んでいくと、「自分達だからできる」
「学生だからできる」という事は売り込みポイントにもなってくる。
何故これが大事かというと、アイデアとしてはプログラミングやロボット、
マッチングサービス等色々なものが出ていたけど、皆さんは今学生なので
それぞれ実務経験が無いよね。
そうすると、良いプランでも、いざやろうとした時に「本当にそれ作れるの?」
という話になってくる。
だから、その時の売りとして、「自分達だからこそできる」という事が非常に
大事になってくるんだ。
—「本当にやりきれる人」である事を示せ—
プレゼンについて言うと、内容だけではなく、与えられた時間をきっちり守る事も大切。
基本的に皆さんがプレゼンをするときは目上の人に時間を頂く事になると思うんだけど、
まずは給与がかなり高い人の時間にどれくらいの価値があるのかを考えることが大事。
普通はそもそもそんなに長い時間はもらえない。
せっかく良いプレゼンをしても、時間をオーバーしてしまうと
「こいつは時間すら管理ができないやつだな」という評価をされてしまう。
結局、投資家が何を見ているかというと、アイデアだけではなくてその人間が
本当にプランを実行出来るのか、経営能力があるのか、というところまでを見ている。
ただのアイデアだったら、極端な話パクればいいだけ。
アイデアだけだと、「良いアイデアだからお前やれよ」と、
隣にいるできる奴にやらせればいいという事になってしまう。
逆に言うと、アイデアが無くても、管理能力があって技術力があれば
「お前、あれやれよ」っていう風に任される事もある。
それくらい、「やりきれる能力がある」という事は大事。
若い起業家の皆さんは、是非、自分の人脈やアイデアとか、色んな能力をフルに使う
という事だけではなく、まずは自分たちが社会人として事業をしっかり推進して
やっていけるんだという事をアピールしていってほしい。
—資金調達方法は、複数ある。最適な形を選べ—
今日は5%の株式で1000万出資してほしいとか、第三者割当増資の提案を中心に
色んな依頼があった。
皆、色々な思いがあってプレゼンに臨んでいるんだと思う。
ただ、そもそも資金調達には、第三者割当増資だけでなく、借入や、
大企業内での社内起業など色んな方法がある。
皆が実現したいことに応じて、最適な形を選んだらいいと思う。
社内起業という点では、うちの社内でも、色んなビジネスアイデアが提案されてくるから、
「このビジネス面白い」という時には、どんどん立ち上げている。
会社の中でビジネスをやるのと、自分で起業するのとでは、どちらも善し悪しがある。
会社の中でやる場合には、会社から保護を受ける代わりに搾取をされることになる。
大成功しても、給与が上がったり地位が上がったりするくらいだけど、一方で、
失敗したとしても借金も抱えなければクビにもならず、リスクが無いのが
社内でやる時の良いところ。
あとは、予算規模が違うため、最初から大きく考えられるところも違う点。
例えばDMM英会話をやったときも、最初は2年で黒字にさせるという話が上がってきたけど、
そんな短期視点で事業を考えると、小さくまとまって、最後には負けてしまうので、
最初は利益がでなくてもプロモーション予算を突っ込んでシェア1番をとりにいき、
10年続けようという風に考えてやってきた。
そういう意味ではVCとはまた違った考え方だね。
ただ、一番良いのは銀行からお金を借りて、リスク張って借金返しながら、100%自己出資で
誰からも何も言われないでやれるのがベストかな。
俺なんかも、誰も投資してくれなかったから、借金して自分で返しながら
ここまで会社を大きくした。
だから今伸び伸びやれているという点もある。
投資家がいないから文句も言われないし、伸び伸びやれている。
これは運も含めて結構ラッキーだったのもあるけど、結構大変な話でもある。
それに比べると、今のみんなは、出資を受けるとか、社内でやるとか、借金をするとか、
まだまだ色々な選択肢がある。
そういった色んな選択肢を、自分自身の目的意識をあわせて考えて、借金するのか、
出資を受けるのか、どこかの会社で社内起業するのかとか、
どんな選択肢がいいか考えてみら良いんじゃないかなと思う。
【Q&A】
Q:
もし、亀山会長が今の自分達と同じ年代だったら、どんなビジネスをしたいですか?
A:
俺が君達ぐらいの年頃の時は、原宿あたりで布きれを敷いてアクセサリーを売っていた。
革にアラレちゃんの脇キャラの絵を描いて、500円で売っていたんだけど、
もし今同じ年齢だとしても、多分またそれをやると思うな。(笑)
それで、全国気ままに旅して小銭稼ぎしていたけど、結構見えてくるものもあった。
俺はIT出身じゃなくて、露店出身。
だからうちは、IT以外の事業も結構やっている。
もし、君たちがITに近い人間だとしたら、これから先、ITだけではなかなか戦えないと思う。
ITだけだと、Googleと何が違うの?という事になって、世界のトップIT企業との
競争になりやすい。
ただ、ITじゃない所と、ITを結ぶという領域はまだ隙間がある。
うちがDMM.Eを始めた理由は、IT化が遅れている電子チケットとか、
そういった所を狙っているという点もある。
今はみんな、音楽はタダで聞こうとするし、動画もタダで見ようとする。
でも、コンサートだったら汗かきながらみんなで共有したいって思う所はあると思うんだよね。
そういった所が今後はビジネスになると思っています。