先輩起業家の声

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TEDxWasedaU 代表講演「キャリアに保険をかけよう」書き起こし

2015/6/20に行われたTEDxWasedaUへ
弊社代表が登壇し、講演した「キャリアに保険をかけよう」について
講演内容を書き起こしてみました。

TEDxWasedaU当日の動画はこちらから

講演内容の3つのポイント

1:『キャリアにはリスクがある』

10年で7割の仕事がなくなる。
早稲田大学を卒業し、上場企業に就職しても、20代でリストラされる。
変化が激しく、キャリアにリスクがある時代だからこそ、
自ら事業を創る力を身に付けることが必要。

2:『事業を立ち上げる力は、会社では身に付かない』

会社員経験では、自ら事業を創る力は身につかない。
営業成績Topで表彰され、新規事業スタッフとして働いても、
現実の起業とは、大きなギャップがあった。

3:『ラーメン代起業から、始めよう』

「1000億円のスタートアップを創ろう」と、
言ったところで、イメージがつかないものは踏み出せない。
まずは、月10万20万の利益を出せる事業から始めよう。
生活費を稼げれば、失業リスクも無くなり、志に挑戦もできる。
その延長線上に、上場企業の起業家がある。
とにかく、自ら事業を立ち上げる経験こそが、起業スキルを磨きあげるのだ。

TEDxWasedaU「キャリアに保険をかけよう」書き起こし

—10年後、今の仕事の70%はなくなる—

皆さん、こんにちは。
私は、大学生が起業を学ぶビジネススクールを運営している
WILLFUの黒石と申します。
本日は宜しくお願いいたします。

私はこれまで、ずっと就職支援の仕事に携わっていまして、
その後起業支援の仕事に携わって、
合計10年ぐらいずっとキャリアを考える領域で
仕事をしてまいりました。
そういったバックグラウンドをもとに、本日お話させていただきたい内容はこちら。
「キャリアに保険をかけよう」という話をさせていただければと思っています。

どういう事かというと、今、私たちのキャリア・仕事は想像以上のリスクに
さらされているということです。
オックスフォード大学の先生の研究によると、IT化の進展によって
10年後、我々が今取り組んでいる仕事の70%は消えてなくなると
言われています。
こういったIT化の進展を受けて、若い方の中では、仕事が無くなるのであれば
プログラミングを学んでおけばいいのではないか考え、色んなITスキルを
学んでいらっしゃる方も増え続けています。

ただ、今から10年後、20年後については、このプログラミング技術ですら、
ロボットが勝手に開発をし始めるようになるとも言われており、
どんなスキルを持っていても、10年後には多くの仕事が無くなると言われています。

そんな中で、もし我々が取り組んでいた仕事がなくなったらどうなるかというと、
ご存じの通り、リストラされて失業することになります。
もし、我々が25歳ぐらいの若いタイミングでリストラされたとしても、
まだ次の仕事は当然ながらあります。
若い方であれば、今までの経験がなくても再就職をしていくことができますし、
転職先はいくらでもあります。

ただ、我々が今仮に25歳だとしたときに、15年後、40歳のタイミングで、
それまで15年間蓄積してきた仕事が、
社会から一切必要とされなくなってしまった場合、
40歳で、新しい仕事で転職先があるかと言われると、残念ながらありません。
40歳にくると、新しい仕事に転職をしようと思っても、
それまでのキャリア、経験が求められてしまい、
なかなか転職先が無いという状態になります。

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そんなことを想定した上で、
10年後に、今、我々が取り組んでいる仕事、
もしくは、学生さんであれば、これから新卒で就職していくであろう仕事・会社が、
消えてなくなってしまったとしても、
「私は準備万端だから大丈夫だよ。」と言えるような方は、
どれくらいいらっしゃいますでしょうか。

多分、ほぼいらっしゃらないのではないかと思います。
多くの方がこういったことを想定してアクションできているかというと、
なかなかできていないのではないでしょうか。

ただ、こういった形で40歳になったときにリストラされたとしても、
最低限自分の生活費ぐらいを自分で稼ぐことができるようになっていれば、
生活を行っていくことはできます。
さらに、ただ生活できるだけだと全然人生が面白くない、となったとしても、
自分が「やりたい・好き」なことを仕事にする力があれば、これも解決できます。

「仕事にできる」というのは、
自分の思いを「事業」として作っていくことができる力が
あるということです。

その力さえあれば、
自分がやりたいことを、人生かけてずっと、
かつちゃんと生活もしながら
追求していくことができるということになります。

—キャリアに、保険をかけよう—

本日は、そういった「自分で仕事を作り出す」生き方を目指していくために、
「ラーメン代起業」という保険をかけませんか?というご提案をしたいと思っています。

例えば、我々が起業しようとした時に、いきなり「俺はソフトバンクを超えるぜ!」とか
「俺は楽天を超えるぜ!」みたいなことを言っていたとしても、なかなか
何から始めたらいいのかイメージがつかない方が多いのではないかと思います。

ただ、この「ラーメン代起業」とはどういう意味かというと、先ほど一風堂さんも
スピーカーとしていらっしゃいましたが、「一風堂で働こうぜ!」みたいなこと
ではなくて、一風堂さんで毎日ラーメンを食べ続けることができるような
最低限の生活費を稼げるぐらい、月20万とか、月50万とかを稼げる
起業からまずスタートしてみてはいかがでしょうかということです。

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—他人事ではない、若者のリストラ—

私がこんなことを考え始めたキッカケは、全てリーマンショックが原点にあります。
2008年当時、リーマンショックが起こった時、私は愛知県名古屋市で自動車の
部品メーカーさんを中心にして、就職支援サービスを提供しておりました。
当時、日本の自動車産業は世界でNo.1の活躍を続けておりましたので、
こういった工場の製造現場で働かれるような方々の採用が愛知県だけだとできず、
日本全国で採用活動を行っておりました。
そういった就職支援をしていて、「我々は世界No.1の会社の成長支援を
しているんだ!」という自負をもって仕事をしておりましたし、
働かれている方々も「我々は世界No.1の仕事をしているんだ」
という自負をもって仕事をしていらっしゃいました。

ただ、リーマンショックが起こった瞬間から、工場は一斉に停止をしました。
それ以降、何が起こったかというと、当然ながら工場が止まっている以上、
人を雇い続けることはできないものですから、リストラが行われました。
当時工場の製造現場で働かれている方の多くは、会社が用意した寮に住んで、
住み込みで働いていらっしゃいました。
しかし、当然ながらリストラをされると、まずは寮から追い出されます。
彼らがそれ以降、どうやって生活をしていたかというと、まずは地元に帰ろうと
思われる方もいらっしゃるんですが、そもそも地元に帰っても仕事がないから
わざわざ名古屋に出てきているので、名古屋で転職活動をしようと頑張ります。

ただ、家から追い出されたので、まずは住むところを探さなければならない。
そう思って彼らはまず、まずはマンションを借りようとします。
しかし、給料がない。
給料がないとマンションを借りることができない。
そこで、彼らはホテルに住み込んで、ホテルに泊まりながら
ハローワークに通って転職活動を続けていらっしゃいました。

ただ、当然のように多くの方がそれほどの貯金があるわけでもなく、
いつの間にか貯金が尽きて、路上に出てくる。
路上にでてきながら転職活動を続けている。
ということが起こっていました。

我々と同じ20代、30代の若い方々が、路上に出てきてホームレスになっている
という事態が発生していたのです。
それまで、約1年ぐらい前までであれば大歓迎されていた仕事であったとしても、
日本全国で求人が行われて、是非ここで働いてくれと誰もが言っていた仕事で
あったとしても、ある瞬間を境に一斉に必要とされなくなってしまうという
事態が発生するのです。

多くの方々がこの仕事に就くために、色んな技能を磨き続けて、学校に通って
勉強してきたにもかかわらず、ある瞬間からその仕事は一切必要ないと言われてしまう。そんなことが発生していました。

その時に私が感じたのは、「キャリアにはリスクがあるんだ」ということでした。

仮に色んな勉強をしてきて、学校を卒業して、世界No.1の会社に就職したとしても、
普通にこういった事態が発生してくるんだということを痛烈に感じました。
これが一番最初の原点の経験でした。

翌年、私はさらに大きい経験をいたしました。
それは、親友のリストラでした。
私は社会人になってから入社1年目の時に、あるグループ会社に出向していました。
なので、そのグループ会社の中に多くの友達がいたんですが、その中にまさに
この早稲田大学を卒業した同期がいまして、その人とかなり仲良くなっておりました。
私がたまたまその時に結婚したものですから、その友人に「是非結婚式に来てくれよ」
ということで声かけて回っていたんですが、その時に言われた言葉がこれでした。

「かなりプレッシャーかけられて辞めさせられて、今、転職活動を
しているんだけど、全然決まらないんだ。
正直、結婚式どころじゃないんだ。」と。

その会社は、私が入社した当時、同期が60数人いたにも関わらず、
このタイミングではたった1桁しかいなくなっていました。
ほとんどの人がリストラにあっていました。自分と同じ同期の人々が、です。
私は、名古屋で働いていた時に、若い方がホームレスになっているところを
見た瞬間だけでいうと、まだ「社会問題としてこういうことが起きているのだ」
という風にしかとらえていませんでした。
しかし、この時本当に、たとえ早稲田大学をでて、大企業に就職したとしても、
自分の身にもこの事態が降りかかってくるんだということを、初めて痛感したんです。

同時に、私自身が働いていた本社においても、色んな説明会が開かれ始めました。
企業年金制度が変更になります。
退職金制度が変更になります。
そういった説明会でした。
私はこの時初めて、自分がもしこの会社で65歳まで働いたとすると、どれだけの収入を
得ることができるんだろうということを計算してみました。
すると、仮に65歳までこの会社で働いたとしても、老後全く生活していくことが
できないということに改めて気づいたのです。
このとき初めて、この問題が自分ごとに置き換わりました。

自分のキャリアにも、リスクがあるんだ、ということに気づきました。

—事業立ち上げと、企業で働くことのギャップ—

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ただ、ここまできたとしても、私には密かな自信がありました。
何故かというと、当時働いていた企業の中では、営業成績が1番であって、
これは壇上で表彰されている写真ですが、かなり活躍しているという風に
勝手に思っていたので、自分は優秀なんじゃないかと勘違いしていまして、
どんな仕事でもできるんじゃないかと、思い込んでいました。

当時、営業成績がいいということに加えて、さらに新規事業の戦略企画スタッフ
とかをやらせていただいていたものですから、私は仕事ができるんじゃないかと、
仮に私がリストラされたとしても、自分で新しい事業を作り出すことができて、
その仕事によっていくらでも大きいことをやっていくことができるんじゃないかと、
そう信じていました。

ただ、こういった社会情勢や友達のリストラを受けて一抹の不安を覚え、
ちょっと土日で事業を立ち上げてみようと思って、立ち上げを始めてみました。
そこで、どんな事業を立ち上げてみたかというと、中学1年生を対象にした、
自立型中学生養成講座というよくわからない講座を設けて、こんな折込チラシを
世田谷区一面に入れて、自分のポケットマネーから50万ぐらい広告費を
投下してみたんです。
これ、見ていただけると分かると思うんですけれども、
何やるかよくわからないんですよね。
これでお客さんが集まるわけもなく、結果大赤字になりました。
今まで自分は圧倒的に優秀なんじゃないかと勘違いしていたんですけれども、
どうすればこの事業がうまくいくのかというところが全く分かりませんでした。

改めて振り返ってみると、自分で新しく事業を立ち上げようとしてみて
気づいたことがあります。
それは、この事業を成功させていくために優秀な仲間を集めようと思ったときも、
どうすればいいのかが全くわからず、事業を立ち上げていくためにHPをどうやって
作ればいいのか、誰に発注すればいいのかも全く分からないということでした。
加えて、名刺の作り方もわからない、セミナーを開こうとしても、場所の借り方と、
どこで場所を借りることができれば、一番効率的なのだろうかということも
よくわかりませんでした。

その時、大企業で新しい事業を立ち上げて、戦略企画スタッフをやっていたとしても、
自分で0から事業を作っていくという力とは全然違うんだということに改めて
気づいたんです。
改めて振り返ってみると、大企業の中で新しい事業を経営していたとしても、
優秀な人材をいかに調達してくるかということについては、
圧倒的に優秀な人事部のスタッフが集めてきてくださっていて、
最適な場所を調達しようと思ったときでも、
優秀な総務部のスタッフが考え抜いて場所を抑えてくれていました。

名刺を発注しよう、Webサービスを作ろうと思ったときも、
アシスタントの方が勝手に動いて、素晴らしい名刺を、
素晴らしいサービスを調達してきてくれていました。
大企業で働いている間は、知らぬ間に優秀な人々が陰で支えてくれていたからこそ、
初めて事業が成り立っているんだということに気づいたんです。

あくまで自分がやっていた仕事というのは、大きい事業の中の、1つの事業の中の、
さらにたったひとつの役割、「戦略を作る」という役割にフォーカスして、
それしかできていなかったんだということに、このとき初めて気づいたんです。

—まずは1歩、小さく踏み出してみる—

与えられた仕事をやっているだけではマズいということを感じました。
大きい会社の中で、事業運営に携わるということではなくて、小さな事業でもいいから、
0から自分で事業を立ち上げる経験、そういった力を身につけていかないと、
自分は退職した後に、生活していくことすらできないんじゃないかということに気づき、
そこから、この「ラーメン代起業」を考え始めて、動き始めました。

ここで言っている「ラーメン代起業」というのは、先ほど申し上げた通り、
最低限の自分の生活費ぐらいは稼げるぐらいの仕事を言っておりますので、
大体月に20万から50万とか100万ぐらいの収益を稼げるような事業を
まずは立ち上げてみようと思って立ち上げてみたわけです。
具体的に言うと、先ほどに出てきたように、教育サービスとか、イベント事業、
Webメディア、株式投資や、FX、不動産投資なども含めておりますが、
色んな事業に挑戦いたしまして、土日はとにかく事業に挑戦し続けました。

結果として、3年後、前職を辞めるタイミングでは、月100万円ぐらいの収入を
得ることができて、そういった収入があるからこそ、自分がやりたい事業に対して
本気でコミットして進めていくことができるまでになりました。

私は、自分のミッションとして「若者が未来に希望を持てる社会を創る」ということに
コミットしていて、そのために「起業家率の向上」、
1人でも多くの方が起業に踏み出せる社会を創るんだということを
ビジョンに掲げておりますので、
そういったことをつきつめてやっていきたいと思っておりました。

だからこそ、今やっているような、大学生の方が起業に踏み出せるような
ビジネススクールを運営しているんですけれども、そういったものの立ち上げを
全力で行っていました。

この時に大事なのは、もし私が仮に月100万ぐらいの収入を得ることが
できていなかったら、このビジネススクールを通じて、短期的に収益化を
図らなければならないので、物凄く短期的な視点に立ってビジネスを
考えていたと思うんです。
しかし、教育サービスは時間がかかるサービスですので、
短期的な成果を追い求めた瞬間お客様が離れていくんです。

なので、絶対に今みたいに上手くいっていなかったと思います。
ただ、私は月々100万ぐらいのちょっとした生活費を稼ぐことができていたからこそ、
純粋にお客様に向き合ってサービスを設計していくことができました。

そのため、その後参加させていただいた、
ある会社さんが主催する起業家コンテストでは優勝することができ、
その後も色んな先輩起業家さんや投資家さんからご出資をいただくことができ、
今週で言いますと「渋谷で教える起業先生!」という本も出版させていただくことができて、次の成長の兆しが見えてくるところまでやってくることができてまいりました。

では、なぜここまで来れたのかということを改めて振り返ってみると、
最初から申し上げている通り、ちょっとしたビジネスを愚直に立ち上げていって、
小さい事業でも、それを積み重ねて最低限の生活費を稼ぐ力があったから
ということが1つ。

あとは、大企業で一部の仕事に携わるのではなくて、0から事業を作り上げていく
という経験をいくつも積み重ねていたからこそ、今の事業が立ち上がったのでは
ないかと思っています。

今、我々の社会については、社会的な変動が大きく、最初に申し上げた通り、
10年後には、70%の仕事が無くなると言われています。
こういった変動が激しい今だからこそ、我々もただ就職していくだけではなくて、
ちゃんとキャリアに保険をかけていこうということ。
具体的なアクションとしては、まずはラーメン代起業。
月50万円でも、100万円でもいいので、自分で事業を立ち上げるという経験を、
是非、積み始めていただきたいというメッセージでございました。

以上でございます。
ありがとうございました。






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