学生起業はメリット多数!失敗を恐れない学生起業家の成功理由を解説
こんにちは。学生起業スクール「WILLFU STARTUP ACADEMY(ウィルフスタートアップアカデミー)」を運営する、株式会社ウィルフの代表で、金沢大学特任准教授の黒石健太郎です。
これまで、延べ10,000人を超える学生起業志望者と会い、1,500人を超える大学生の起業をサポートしてきました。私たちの学生起業スクールの特徴は、受講生全員が実際に事業を立ち上げることにあります。
この記事では、これまでサポートしてきた1,500人の大学生が、実際に事業を立ち上げてきた取組みを振り返り、その中から学生時代に起業するメリット、成功事例などのポイントを整理し、学生起業に必要なことをまとめました。
<目次>
学生起業にある3つのメリット
失敗は怖くない!学生起業家たちの成功事例
学生起業にある3つのメリット
学生起業には、起業家本人にとってのメリットはもとより、社会的なメリットもあります。
大きくは、「起業意志が低くても、キャリアを考える上で学生起業経験を積むメリット」「起業家として成功するために、学生時代に起業するメリット」、そして「学生が起業することで、社会が得られるメリット」の3つです。
これらを細かく分けると、11ものメリットがあるのですが、具体的に詳しく解説します。
メリット1 起業意志が低くても、キャリアを考える上で学生起業経験を積むメリット
成長意欲が高い学生を中心に、在学中に経験しておくべきことの選択肢として、留学や長期インターンがあります。これらの選択肢に加えて、今の時代、必ずしも「将来、起業したい」という意志がなくても、「学生時代に起業の経験だけは積んでおきたい」という人は増えています。
では、起業意志自体は低くても、在学中に起業経験を積んでおくことが、キャリアにどのようなメリットがあるのでしょうか。
・就活にプラスの影響しかない
国内人口が減少し、市場が衰退し続ける環境下では、どこの企業でも、既存の事業を運営しているだけでは売上が減少し続けることになります。そのため、ほとんどの企業において、新規の事業を開発する必要性が高まっています。
一方で、これまで採用してきた社員は、既存の事業を運営するために採用しているため、必ずしも「新しい事業を創れる人材」ではありません。
結果、「新しい事業を創れる人材」が、奪い合いになっています。
では、新しい事業を創れる人材かどうかは、どのように見極めているのでしょうか?
起業経験がある人であれば、相手が、いくらプレゼンがうまくても、いくら事業計画をきれいに描ける人でも、机上の空論ではうまくいかないことはわかっています。そのため、面接やディスカッションの印象だけでは、採用可否を判断すべきではないととらえている企業が多く、結果として「これまでの実績」が問われることになります。
そのため、起業経験がある学生が、就活で奪い合いになっているのです。
2019年3月1日の日経産業新聞でも、一面で「求む新人は学生起業家」と、大々的に報じられていました。
▼詳しくはこちら
日経産業新聞一面で『求む新人は学生起業家』とWILLFU CAREERが掲載
実例として、立教大学の学生でWILLFU STARTUP ACADEMYの卒業生だった加藤千人(ゆきひと)さんは、就職活動の際、在学中の事業立ち上げ実績をスライドにまとめて面接に臨み、すべての応募先に対して新規事業の提案をスライドに落とし込んで提案し続けた結果、10社を超える内定を獲得していました。
▼詳しくはこちら
「10社超からの『内定』獲得!奪い合いになる『起業家学生』の就活とは!?」14期 加藤千人(立教大学4年)
このように、学生のうちに起業した経験があると、就活にプラスの影響が出てくるのです。
・会社の売却を通じた上場企業への就職もありうる
在学中にただ起業経験を積んだだけではなく、学生起業した会社が急成長した場合、その会社を買いたいという企業が出てくる場合があります。
例えば、横浜国立大学3年生のときに起業した花房弘也さんは、Goroo株式会社を設立し、自社サービスが急成長。結果、東証マザーズに上場しているユナイテッド株式会社によって、13億5,000万円の時価総額で買収されました。
その後、ユナイテッドグループの子会社社長として社長業を継続しながら、20代でユナイテッド本体の執行役員にも就任しました。
このように、学生起業した会社が急成長した場合は、会社の売却を通じて、キャピタルゲインを得ながら就職先も見つけ、なおかつ就職先で最速出世するという可能性も出てきます。
普通に就職活動しているとまったく気付きませんが、想像以上にこのような事例はたくさんあります。
▼詳しくはこちら
学生起業から事業売却に成功した事例!過去10年分まとめ!
・雇われ目線を超えた圧倒的な成長を遂げる
人のお金で裁量権を持って行う仕事と、自分のお金で取り組む仕事とでは、真剣味と思考の深さがガラッと変わります。
ベンチャー企業で長期インターンをしていて、裁量権を持って新規事業に携わり、自身の裁量で1億円の予算を差配していたとしても、所詮、人のお金で考える真剣味は自分のお金で取り組む場合よりも低くなります。結果、それによって得られる成長も、たかが知れています。
しかし、自分自身で、1億円を銀行から借り入れ、そのお金をどう使って事業を立ち上げていくかを考える際の真剣味は、人のお金で行う場合よりも格段に深くなることは、容易に想像がつくのではないでしょうか。
以下の記事では、サイバーエージェントの藤田晋社長も同様のことを述べていますので、ご覧ください。
▼詳しくはこちら
在学中の商売経験が、学生離れした成長を生む(サイバーエージェント藤田晋社長)
学生起業経験を積んできた学生は、細分化された業務の一部に取り組むアルバイト経験やサークルの経験しかない学生と比べて、すべての業務に取り組んでいる分、会社全体を俯瞰して見る事ができます。しかも、自分のお金で、ゼロから仕事に取り組むことで細部までこだわって考え抜く経験を積んでいることは大きいです。
結果として、雇われ目線を超えた成長が見られますので、就職後に大きな差が生じるのです。
・やりたいことができる可能性が上がる
最近、新規事業提案制度を設ける会社が多くなってきました。新規事業提案制度とは、多くは所属や雇用形態を問わず、全従業員が新しいビジネスアイディアを提案しやすいように制度化したものです。[[明14] アルバイトやインターンであったとしても、新規事業提案制度に応募できることも多々あります。
しかし、企業内で取り組む新規事業は、あくまでその企業の中長期計画と整合性があり、その企業だからこそ取り組めるものしか採用されない傾向があります。
学生であっても、自分で起業することで、既存の企業にとらわれない、本当に自分がやりたいことを追求できるようになります。
・低いリスクで高収入を得られる可能性がある
収入面について考えたとき、学生起業のいい点として、「借金ができない点」「うまくいけばアルバイトと比べて圧倒的に稼げる点」の2つ挙げられます。
借金ができないということは、借金というリスクを背負ってしまう可能性がない、つまり、リスクがないということです。
「借金をせずに始められる事業なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、リスクがなく、最初から売上が上がる事業は多く存在し、学生起業家の多くは、そのような事業からスタートしています。つまり、収入を借金返済に回すことがありませんので、最初から売上として計上できるのです。
また、アルバイトとは異なり、起業は労働時間に対して給与をもらうわけではないので、売れれば売れるだけ収入を得られます。これまでの私たちの学生起業スクールにおいても、受講生が生み出した最大の利益額は、2週間で1,000万円でした。なお、1,000万円を超える利益を生み出した大学生は、大学1年生と4年生の2人でした。
このように学生起業は、うまく軌道にのれば、借金というリスクなく高収入が得られる可能性を秘めているのです。
・バイトで雇われて働くよりも楽しい
日本政策金融公庫総合研究所が発表した「2018年度新規開業実態調査」によると、会社員として働いていた人が辞めて起業した場合、その満足度は67.9%に達しました。反対に、起業すべきではなかったと不満に思っている人は11%しかいないのです。
なぜ、そうなるのかを調べてみると、仕事のやりがいが段違いに大きいからという要因でした。要は、雇われて働くよりも、自分でゼロから考えて起業することのほうが、圧倒的にやりがいを感じることができ、楽しいのです。
起業の場合、最初は労働時間が少し長くなるようですが、自宅や学内で起業することで、職場への移動時間がゼロになることもあり、それで調整できることがあるようです。
▼詳しくはこちら
起業って、楽しいの?起業家の満足度とその内訳を徹底分析!
メリット2 起業家として成功するために、学生時代に起業するメリット
次に、「本気で起業したい」「起業家として成功したい」と考えている学生に向けて、起業家として成功する上で、「学生時代の起業」という選択肢にはどのようなメリットがあるのか整理しておきましょう。
・バーンレートが低い
月々のコストが売上よりも大きい場合、その差額を「バーンレート」と呼び、毎月その金額が会社からなくなっていきます。そして、お金がなくなればゲームオーバーになるのが起業です。
つまり、バーンレートが高いとゲームオーバーまでの時間が短く、バーンレートが低いとゲームオーバーまでの時間が長くとれます。
創業時の企業において、コストの大きな内訳を占めるのは、人件費になります。そのため、人件費が安ければ安いほど、バーンレートを低く抑えることができます。
学生起業家の場合は、自身の生活費は実家からの仕送りやアルバイトでまかなわれていることが多く、究極的には自分自身の人件費はゼロ円でも、事業運営が可能となります。
その結果、起業のコストに人件費をあてる必要がないため、長く挑戦することができ、試行錯誤し続けることで、成功する可能性が生まれてくるのです。
・投資家や先輩起業家からの支援やアドバイスを受けやすい
実際に学生起業をして、さまざまな人にアドバイスを求めて動き始めるとわかると思いますが、自身の想像以上に投資家や先輩起業家など、多くの人が応援してくれます。
若い人ががんばっていることに、大人は応援したくなるという心情があるのも事実なのですが、投資家や先輩起業家にとっても、若い学生起業家を応援するのには理由があります。
まず、投資家として見たとき、バーンレートが低い起業家であればあるほど、投資リスクが低くなります。そのため、学生起業家は投資リスクが低く、リターンを確保できる投資対象になりますので、投資しやすいと判断されるのです。そのため、若い学生起業家には、どんどん会いたいという投資家もいます。
また、積極的に接触してくる先輩起業家には、優秀な若者を採用したいという思いがあります。特に、在学中から起業しているような若者、つまり学生起業家はぜひ採用したいと考えているのです。人間関係を作って自社に取り込めないかと考えながら会ってくれる先輩起業家も、多数存在しています。
結果として、学生起業家側からみると、資金調達もしやすく、先輩起業家たちからアドバイスももらいやすく、事業の成長をスピーディーに成し遂げることができます。
・社会人よりも、自由な時間が多い
社会人になり、働きながら起業活動に取り組もうとすると、平日の夜や土日しか時間がありません。
一方、学生の場合は、社会人よりも時間が取りやすく、部活にもサークルにも所属しない場合、完全に自由な時間が膨大に生まれます。
結果、初体験の課題に膨大にぶつかり続ける創業期を、圧倒的な業務量で乗り越えることが可能となります。
・失敗しても、いくらでもやり直せる
ゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」で有名なガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社を創業した孫泰蔵さんは、「僕は学生時代から起業していたから、40代でパスドラがヒットするまで、100以上の事業立ち上げに取り組むことができた」とおっしゃっていました。
事業というのは、なかなかうまくいきません。
しかし、学生時代から挑戦しておくことによって、例えば20歳で起業して40歳までであれば、20年間も試行錯誤し続けられます。仮に36歳で起業した人が40歳までの4年間しか試行錯誤できないのと比べると、5倍もの試行錯誤が可能となり、最終的に、成功を得ることができる可能性を高くすることができます。
メリット3 学生が起業することで、社会が得られるメリット
最後に、学生起業が社会に与えるメリットを見ておきましょう。
・イノベーションを通じた経済成長が可能になる
AppleやMicrosoft、Facebook、Yahoo!など、世界の主要企業は、ほぼすべて学生起業から生まれています。
その理由は、若いがゆえにこれまでの常識にとらわれずにサービスを開発できることに加え、バーンレートが低いために、一般企業ではリスクが高いと評価される事業ですら容易に挑戦ができるからといわれています。
学生起業への挑戦こそが、結果的にイノベーションの創出につながり、イノベーションの創出が、日本の新産業創造や経済成長につながっていくのです。
失敗は怖くない!学生起業家たちの成功事例
学生起業家たちの成功例を調べてみると、共通点がありました。
1つ目は、創業当初は、営業代行など参入障壁が低く、マネタイズしやすい事業から始めている点。
2つ目は、事業変更を繰り返している点です。
では、学生で起業した人たちの成功事例を、具体的に見ていきましょう。
学生起業家の成功例
実際に、日本の学生で起業した人たちの会社をご紹介します。
株式会社ハイパーエイトは、五十君圭治社長が大学2年生のときの2012年に創業し、当時の街コンブームを生み出した会社です。街コンというビジネスモデル自体は、人を集めて参加費でマネタイズするモデルとして、昔から学生団体主催のクラブイベントなどの形で存在していました。ハイパーエイトの創業期には、こうした学生でも新規参入しやすい街コンの企画運営に取り組み、五十君社長が大学生でありながらも年商1億円を突破しました。
その後、事業内容の変更を続け、「mespo(メスポ)」や「タベニーク」などのサービスにも取り組んだ後、現在は、ギャラ飲みマッチングサービス「LION(ライオン)」をスタートしています。
現在、取り組んでいるLIONは、客単価27,000円、30日以内のリピート率68%となっており、運営会社であるハイパーエイトは毎月の売上成長率が40%と急成長している企業です(2017年6月時点)。
2014年創業。創業当初は、明治大学に所属していた清水正大社長を中心とした強力な営業体制を軸に、営業代理店として、さまざまな営業商品の代理業に取り組んでいました。営業代理店事業というビジネスモデルも、参入障壁が低く、営業力さえあれば成長させることができます。清水社長は、元々、弁論部で活躍していたこともあり、特にコミュニケーション力が高かったことから営業にも秀で、急成長していました。
その後、事業内容の変更を続け、ロボット事業などを経て、現在はチャットボットマーケティングツール「zeals(ジールス)」を提供。直近半年の売上成長率は月次平均136%、1年間で10倍を超える売上成長を続け、資金調達においても累計8億5,000万円を調達しています(2019年9月現在)。
2017年、北森聖士社長が大学3年生のときに創業しました。株式会社設立時は、タレントマネジメント事業からスタートし、プロモーション支援事業、クリエイティブ制作事業まで展開しています。
北森社長は、株式会社化する前にも、高校3年のときから父親が経営する飲食店の事業再生に携わり、オンラインを活用した物販ビジネスにも取り組む経験をしています。その後も多くの事業に挑戦し続け、株式会社を設立し、現在のタレントマネジメント事業に至ったとのことです。親が会社経営をしている人であれば、最初にもっとも携わりやすい経営は親の会社の経営を担うことです。北森社長は、そこからスタートした、というわけです。
詳細情報は非公開ながら、私が個人的に聞く限り、売上も急成長を続けています。
学生起業での成功のルール
例として挙げた3社の共通点こそ、成功のルールになります。
(1)創業当初は、営業代行など参入障壁が低く、マネタイズしやすい事業から始める
(2)事業変更を繰り返す
学生起業家の弱みは、社会経験・情報量の圧倒的な少なさです。
そのため、最初に立ち上げる事業で、拡張性・継続性がある事業アイディアに思い至ることは極めてまれです。
マネタイズしやすい事業から始めて事業を軌道にのせ、その後、事業内容を変化させることでさまざまな経験を積み、情報量も増え、拡張性・継続性がある事業アイディアに行き着き成長を続けていく、という流れになるのです。
事業内容が変わり続け、拡張性・継続性がある事業アイディアに至るまでには時間がかかるからこそ、お金が尽きないように、最初に立ち上げる事業では、着実にお金が稼ぎやすい事業から始めている点もポイントです。
例として挙げた3社では、街コン、営業代行、飲食業(親の会社経営)など、事業モデルとしてはわかりやすく、稼ぎやすい事業からスタートしています。
学生起業家のよくある失敗と失敗からの学び
では、どんな経験からどんな気付きを経て、学生起業家が成長していくのか。
わかりやすい事例は、「妄想電話」という400万ダウンロードを突破するヒットアプリを東京工業大学在学中に開発し、株式会社イグニスへの事業売却に成功した根岸侑平さんです(現・株式会社Sanrenp 代表取締役社長)。
妄想電話に至るまでに、10以上の失敗サービスを作り続けたとのことでした。
いろいろな失敗サービスを作って気付いたこととしておっしゃっていたのは、最初に立ち上げたサービスは、「社会はこうあるべきだ」という、独善的な考えでサービスを作っていたということ。実際には、そういったあるべき論などのきれい事は抜きにして、ちゃんと「顧客の欲求に沿ったもの」を作らないとダメだという点に気付いたとおっしゃっていました。
▼詳しくはこちら
【学生起業「成功の鍵」】起業家・投資家・新規事業責任者等メンターからのアドバイス10選
学生起業家が陥りがちな失敗は、自分の理想論やあるべき論で考えてしまうこと。しかし人は、欲求に素直にしか動きません。そんな気付きを経ているからこそ、街コンやタレント事業など、多くの学生起業家が、わかりやすい欲求に基づいた事業で収益化に成功しているのでしょう。
↓本記事はここまでです。学生起業の具体的な進め方については次の記事を参照してください!↓
学生起業の方法とは?何から始めるべきか具体的なやり方を解説します
<著者プロフィール>
著者:黒石健太郎
2006年、東京大学法学部卒。株式会社リクルート入社後、新規事業の戦略企画、立ち上げに従事。2013年6月、起業に特化したビジネススクールを運営する株式会社ウィルフを設立、代表取締役社長に就任。サイバーエージェント主催起業家コンテスト「アントレプレナー・イノベーションキャンプ」優勝。2018年9月より、金沢大学 特任准教授。ほか、関西学院大学や近畿大学でも教鞭をとる。著書に『渋谷で教える起業先生!』(毎日新聞出版)がある。
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